5代目の山岳迷走記第5章 山岳迷走記の目次ページへ ①隠れ滝第1部 山歩きは地図読みから 不遇の登山道・忘却されし滝を訪ねて 今回のテーマ 「地形図を使い、沢を読み解いて滝を探す」 神楽新道口~神楽新道・赤滝沢途渉点(下部二俣)~右俣入渓~階段瀑(上部ナメ二俣) ~右俣左本流~赤滝~ナメ二俣~右俣右支流~堀田林道・右俣右支流途渉点~堀田林道口 探査日 2008年9月26日 地図はこちら 今回は山経験者向き、初心者単独NOの冒険コースです! ※登山用地図にない、且つ登山道から外れたこの滝はおそらくウェブ上に初めての画 像アップかもしれません。隠れ滝を味わいたいという凝った方は、このページを読ま ないで本物を見に行かれるのもよいでしょう。本当に隠れています。 山歩きに国土地理院地形図は欠かせない。たとえば登山道を歩いていても、いわゆる「登山 用の地図」に書かれていない沢などいくらでもある。そこで地形図の出番である。地形図が読 めるようになると、山の形も想像できる。すると登山途中での山座同定、現在位置確認などに 役立つ。谷筋が読めれば登山用地図に書かれていない沢もわかる。また、険しい斜面か緩い 斜面かも検討がつき、行動の時間の算出にも使える。 ![]() ![]() 25000分の1地形図「天元台」。山のピークから派生する尾根筋に蛍光ペンをいれている。 そうすると、尾根と尾根との間は谷であるから沢があるかもしれないと予測できる。そのほかに 新しく入手した情報を書き込んでいく。大滝沢はサワヤご用達だから小さな沢にも情報があ る。前川本流は情報が少ない。 そして、新しい迷走プランを計画中に「滝の地図記号」をみつけた。名前は記載されていな い。とりあえず、ウェブで「前川」を調べる。前川は福島市街で阿武隈川に合流する。管轄は福 島の河川事務所。平成18年に姥湯温泉の4つの露天風呂が台風一過土砂で埋まった記憶が 新しいが、吾妻の崩壊した土砂が前川に流され福島市街に流入するというきわめて現実性の 高い危機に対し、前川はいたるところに砂防ダムが造られている。滝のある沢は地形図「天元 台」に砂防ダムが7つもあるので、もしやと思い治水工事関係の情報を検索。結果、どうやらこ の沢は『赤滝沢』と呼ばれるらしい。ということはこの滝の名前はまず間違いなく『赤滝』で間違 いないだろう。 ちなみに登山用の地図には載っていない。そもそも地元の自分でさえ、近年の登山者からこ の滝の情報を聞いたことはない。地形図から読み取れる情報だけで滝を目指して見る。 情報A 滝に近づくには沢遡行が間違いない。等高線を見るかぎりではそんなに険しい沢で はなさそうである。登攀用具は要らないだろう。 情報B 邪魔な7つの砂防ダムの上部で神楽新道と沢が交差する。ここから入ることにする。 交差地点で沢が二分している。右俣と左俣である。滝は右俣にある。 情報C 右俣入渓後、小さな崖あり。滝に近づくと大きな崖あり 情報D 地図に水線が描かれてないが、等高線を見るかぎり、滝近くで沢が二分している可能 性がある。 情報E 情報Dの谷筋を登れば堀田林道とぶつかる。(どのような状況でかは分からないが) よってうまくいけば堀田林道を使って帰途につける。 では、地形図を手に出発! ※今回の沢はサワヤが集う大滝沢ではなく赤滝沢です。お間違えなきよう。 5:10峠駅前出発 ~ 5:30神楽新道口 秋分の日も過ぎいよいよ秋の行楽シーズンとなると店から離れられなくなる。縦走などできなく なる。今日も日の出とともに行動。8時までには帰宅したい。自動車で滑川温泉より上部の神 楽新道口へ。ここは治水工事関係会社のプレハブ小屋や姥湯の看板があり、はじめてでも探 しやすい登山口。きれいな二等辺三角形の高倉山が見える。 ![]() なんか眠そうなゴリラ面。高倉山の紅葉はまだ。当然、人気の姥湯もまだである。ダム工事関 係車両が入るのか、神楽新道は踏み固められて歩きやすい、わずか5分で沢との交差点に着 いた。 ![]() 5:35下部二俣 向って左が下流、正面が左俣上流、右に右俣上流。ちょうど沢合流地点をねらって登山道を 拓いたのであろう。(地形図情報B確認) 右俣に入る。まさかこのチョロチョロの沢の上流にあんな滝があるとは。 ![]() 入渓直後の崖。地形図どうり小さな崖で歩くのに危険ではない。(地形図情報C確認) ![]() ![]() やはりこの沢も川床が赤い。そして…… ![]() そう、今日も彼がいる。 彼に一言釘をさす「今日は抱っこしませんよ~。自分で歩きなさいっ!」 ![]() 入渓後約30分。渓相が変わりゴーロ帯。「第4章五階滝」のときの大岩のゴーロでギボシ丸は 停滞・視界も大岩でふさがれたが、今回のゴーロは奥が見えるゴーロである。彼を抱っこする 必要はなさそうだし、登攀用具も不必要そうである。(地形図情報A確認) ![]() 入渓後約40分。急峻な崖に岩の塞。大日岳西側の谷にある姥湯もこんな景観がある。大日 岳東側の谷のこの景観を名付けてみたい。地形図を見るかぎり、左俣にも似たようなものがあ りそうだ。岩場というと谷川岳の一の倉をはじめ「※※倉」という名をよく耳にする。すぐに場所 が特定できるということでシンプルに『ウマタ倉(仮称)』と勝手に命名。大きな崖。滝が近付い ている。(地形図情報C確認) ![]() いよいよ滝が近いのか?渓相が変わる。「第4章五階滝」のときのスラブは逆層ですべりやす かった。このスラブは順層でブーツをうまくホールドしてくれる。 ![]() 入渓後約50分。水量のわりに広い滝つぼを持つナメ階段。 6:30階段瀑および上部ナメ二俣 そしてこの上部で予想通り沢が分岐していた。傾斜のほとんどない一枚ナメ床の状態での分 岐だったのは自分の想像の範囲外であり、地形図の等高線を食い入るようにチェックし、なお かつそれぞれの沢を偵察したのち二俣で間違いないことを確認(地形図には水線が入ってい ないので慎重に同定)。この地点を上部ナメ二俣と呼称する(地形図情報D確認) ![]() 左本流にある左手岩壁。地形図を読むかぎりこの奥に滝があるはずだが、 滝がない!! これより先は巨岩帯となり視界の下半分を遮られている。地形図に載っているような滝ならあ る程度の大きさがあるはず、巨岩ごしでも滝の頭くらい見えるだろうに。沢をふさぐ巨岩たちは なかなか手ごわそうである。仕方がないから右手のヤブの中に入る。 ヤブに入ると今までと距離感・消耗度ががらりと変わる。焦燥感が漂ってきた。 ヤブ漕ぎ10分?(ヤブに入ると感覚がくるう) やった!みつけた!! ![]() 6:50東吾妻・赤滝沢赤滝に到着(西吾妻・白布峠の赤滝とは別物) 展望ポイントの足場の悪さ。カメラの構図に入ってしまう木の枝が邪魔をしてうまく撮れない。 2枚を重ねた写真は邪道かもしれませんがご勘弁を。 見事な二段瀑である。潜滝の倍ほどの落差がありそうだ。上段の落ち口がわかりにくいのだ が40メートルはあるのではないか。「美しい」というのが初見の感想。長い年月を経て削られ・ 磨かれてきたスラブの上を河水が落下している!!そして、テーパーがかかっている(先細り) 形状により落下エネルギーが一点に集まっている『しまりのある滝』である。岩壁のコケの濃い 色もまた良い。 沢から見て右手が台地上になっていて、そこに登ってこの角度の滝である。滝は対岸・左手 斜面の凹みにあるから、巨岩帯の手前から滝はみつけられなかったわけである。巨岩帯にい どむか、右手斜面をヤブ漕ぎしないと滝に会えない。やはり隠れ滝である。この滝の角度だけ は地形図で読めなかった。25000分の1地形図にしっかりと記載される大きさはあった。それ にしても少ない情報のみで滝を探しだす感動といったら!! 地形図を見るかぎり、左本流・右支流の間の尾根を登ることができれば簡単に林道に出られ そうだが、シャクナゲや低針葉樹がさながら鉄条網のようなヤブとなっている。特攻を挑んでみ たものの撃沈。急がばまわれ、迂回という選択をとる。 ヤブを戻り巨岩帯の下、沢を少し下り二俣。右支流に入る。こちらも巨岩帯が現れゲンナリ。 岩より斜面のほうがよさげに思えたので右手の斜面に取り付きごぼうで登る。(ヤブをつかんでご ぼう抜きをするような感じで強引に登ること。仮に落ちても危険がないときだけ使える手段) 10分弱よじ登ると堀田林道。 ![]() ここまで来れば仮に倒れても、フランケンシュタインになる前にみつけてもらえるだろう。 頭も少し落ち着いてきた。登山道に出ただけでホッとするものだ。(地形図情報E確認) ![]() 堀田林道から見たウマタ倉。緩やかな下り道。紅葉時は絶景写真が撮れそう。 ![]() 堀田林道口に出る。神楽新道口まで車道を歩き車を回収、帰宅。 ![]() 車道を下りながら。2時間経ち、日が高くなった。ゴリラの顔が赤みを帯びているのだ。 参考データ
追記 なんとお恥ずかしい。茶屋の店内を掃除していたときに、かつては「赤滝」も名が知られていた とうい物的証拠を発見 ![]() 昭和53年の山形新聞の記事。当店の「峠の力餅」が取り上げられていますが ![]() どうも誤字の多い新聞記事です。 ×「大沼へ」→○「大沢(駅)へ」 ×「旧湯川鉱山」→○「旧滑川鉱山」 ×「明川湖」→○「明月湖」 が正しい。…さて、「滑川大滝」「姥湯三階滝」「潜滝」を差し置いて、今では完全に秘瀑となった 「赤滝」が掲載。つまるところ、この当時の登山ブームでは赤滝の見えた堀田林道ルートが主 流だったのかもしれません。その後30年の歳月のなか、「山開き地へのルート高倉新道と神 楽新道」「姥湯から稜線への最短ルート兵子新道」「沢登りや明月荘宿泊縦走で歩かれる大滝 並走登山道」に負けたようです。相手は「新道」を名乗っているくらいですし。堀田林道が不遇 となり、滝は忘却され、登山地図からも消えました。唯一残っていた地形図の滝記号から赤滝 に出会えることができました。これを皮切りに徐々にでも認知され登山地図に赤滝復活とでも なればうれしいですね。 2010.6.13三訂 |